カテゴリー: コラム

タクティールケアとは

BPSDとタクティールケアについて

介護の現場にいる人以外にあまり馴染みのない言葉の一つに「BPSD」があります。
「BPSD」は「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の略で、簡単に言うと認知症が疑われる人の行動や心理症状をまとめた「中核症状」と言われているものです。

具体的なBPSD(中核症状)とされることとして、それまでできていた家事などの当たり前の作業ができなくなってきたということがあります。

認知症というと多くの人が物忘れがひどくなることや人や場所の区別がつかなくなることを想像しますが、そこまで重度に認知症が進行するまでにはきちんと段階があります。

BPSDはそうした認知症を発症してから本格化していくまでに起こるさまざまな症状のことであり、早い段階から適切なケアをすることができれば重度化を遅らせることができます。

そんなBPSDを緩和するために有効とされているのが「タクティールケア」です。
タクティールケアとは人の手を触れさせることによるケア方法のことであり、もともとは未熟児など子供のケアとして実践されてきました。

のちに高齢者に対して行うことでも十分な効果があるということがわかり、現在では介護の現場で積極的に導入をされるようになっています。

人の手が触れることによって起こる変化

私達は傷に治療のことを「手当て」と言いますが、これは人の手を触れさせることそれ自体が大きな治療効果があることからきた言葉です。

タクティールケアはまさにそのまま「手当て」をするものであり、子供や高齢者の体に人の手を触れさせることによって受ける側の健康状態を改善させていきます。

ただ触るというだけの行為なのですが、それがされるときには人の脳内から「オキシトシン」という幸福感を感じることができるホルモンが分泌されます。

オキシトシンの分泌はストレス解消に重要な役割をするのでより多く分泌させる方法について詳しくまとめた書籍などもあるくらいです。
しかし実は特に難しいことをしなくても、誰かに触れてもらうということだけでも十分な効果があるのです。

このオキシトシンの分泌はBPSDを抑えるためにも重要な役割をします。
BPSDの一つである記憶の抜け落ちや場所や時間の感覚異常といったものも、こうしたタクティールケアを継続的に受けることでかなり緩和されるという例が報告されています。

タクティールケアは介護の現場で多く実践されており、担当する職員ができるだけ介護のときに高齢者の手や肩、背中に触れるようにしています。
認知症の家族がいるという方も、こうしたタクティールケアを簡単なところから実践してみると思わぬ改善効果を期待できるかもしれません。

認知症ケア専門士とは

認知症ケア専門士の資格概要

年々深刻度を増しているのが高齢者の認知症の問題です。
認知症はもはや高齢者が身近にいる人たちばかりでなく、社会全体で取り組んでいくことが求められている重大な社会問題です。

現在若くて健康な人であっても高齢になったときにもし自分が認知症になったらということを考える必要があり、誰であっても罹患リスクのある重大な病気です。

しかしながら認知症という症状そのものについては広く知られるようになった現在である一方で、年々急増している認知症患者に専門家として対応できる人材は十分に育成できているわけではありません。

そこでプロの知識と経験をもとに認知症の予防やケアをしていくことができる人材を育成するために誕生したのが「認知症ケア専門士」となります。

認知症ケア専門士が登場したのは2005年からで、現在まで約10年間で約3万6千人の有資格者を誕生させています。
主催をしているのは一般社団法人日本認知症ケア学会で、有資格者の支援や認知症に悩む人に対しての人材紹介も同時に行っています。

資格を得るには過去10年間の間に3年以上認知症ケアに関する実務経験をしてきたという条件があり、受験要件のある人なら学歴に関係なく試験を受けることができます。
試験は筆記試験と論述・面接試験の2回に分けて行われており、合格率は約44%と比較的難しい試験です。

全国約400万人におよぶとされている認知症患者

認知症ケア専門士は他の介護系資格に比べて歴史の浅い資格ですが、民間資格でありながら業界内ではかなり評価の高い資格として位置づけられています。

これは全国で約400万人以上いるとされている認知症患者に対応するためのもので、介護事業者でも職員に取得を推奨したり、有資格者を優先的に雇用したりといった動きが進められています。

認知症ケア専門士の試験で出題される問題範囲は認知症ケアの基礎や実際に起こる問題、認知症ケアの社会的意義などとなっています。
論述試験では特定のテーマに沿ったディスカッションを行うことになっており、決して机上の知識だけでなく実践的な知識を問われるというところが特徴です。

現在全国的に行われている大規模な認知症への取り組みとして「認知症サポーターキャラバン」というものがあります。
これは全国キャラバン・メイト協議会が主催しているもので、2006年より全国で認知症サポーターの育成を行っています。

認知症ケア専門士はこうした認知症についての正しい理解を世の中に伝える活動も同時に行っています。
自治体主催で行われる認知症理解促進のための研究会や講演会も数多く行われているので、そうしたところからの依頼も認知症ケア専門士には多く寄せられます。

ターミナルケアとは

認定看護師の主要一分野である「ターミナルケア」とは

ターミナルケアは、別名「緩和ケア」と言われることもある重病を患った患者さんとその家族に対し心身を支えるための看護を行う仕事です。
この緩和ケアは看護師の上位資格である認定看護師の重要な分野の一つとなっており、高い専門性と十分な臨床経験が求められます。

「ターミナル」という言葉には「終末期」という意味があり、英語ではそのままズバリ「End of life」という名称が使用されています。
直訳すると「人生の最期のための看護」となってしまいますので、文字としての衝撃を和らげるためにすぐにはちょっと内容がわからない「ターミナルケア」や「緩和ケア」といった呼び方をしているのでしょう。

実際のターミナルケアとはどういうものかというと、余命を宣告されてしまった患者さんに対し、残りの人生をどのように送りたいかといったことをヒアリングし、家族とともにそれを支えていくという活動をしていきます。

それは例えば痛みを緩和することでもあり、これから避けられない死に直面するという気持ちを和らげるためのものです。
闘病生活が長い人になると、延命をしてこれ以上苦しむよりは安らかに死ぬまでの時間を過ごしたいという希望が出てきますので、そうしたときにどんなふうに周囲は接していくべきかということをプロの視点から提案していきます。

在宅や施設で行われるターミナルケア

看護師という職業の祖として知られているナイチンゲールですが、実は看護師という仕事がそもそも誕生したきっかけはこのターミナルケアを経験したことによります。

ナイチンゲールは軍属の看護要員として長く戦場で兵士たちの傷を手当してきましたが、その中で何人もの死に立ち会ったといいます。
重症を負ってしまいあとは死を待つばかりとなった兵士たちに対し、どういった対応をすることがより安らかな気持ちになれるかということを考えたことで、看護師という独立した仕事に行き着いたのです。

私達は生きている以上は必ずいつかは死ぬのですが、若くて健康な時期にはそんな死に直面した自分のことを想像することはありません。
しかし高齢者になり、大きな病気を患ったときにはいよいよ死が近いという実感から精神が大きく乱れることになります。

そこでこれから死を迎えるという人に対し、体のケアだけでなく場合によっては宗教的な思想を伝え、患者さんの感じる恐怖感や重圧感を軽くするための仕事をしていきます。

ターミナルケアでは本人だけでなく周囲の家族の協力が不可欠です。
今後は既に死に直面している患者さんだけでなく、これから後期高齢期となる施設や在宅で介護を受ける人たちに対してもターミナルケアを行うニーズは高まっていくのではないかと考えられます。